「試しただけじゃ。凜が、私の後継者にふさわしいか。凜、よいか?お主は女じゃ。だが、戦える女じゃ」

凜の顔に、緊張が走る。

「だったら…好きにせい」

「好きに…?」

「戦うもよし、戦わぬもよし。…選択肢は二つある。自分で決めた道を行け」

…さすがは、海瀬を統べる者とでも言うべきか。

今、俺の目の前で。

凜が後継者として認められた。

「はいっ!」

元気に返事をする凜。

よかったな…。

「蘭、行こう!」

「…仕方ありませんね。…ただし、あなたは私が守ります」

最後と、なるかもしないけれど。

「よろしくね、隊長さん」

「…凜姫様に言われると…なんか変です」

「なんだとっ!?」

そんな怒んなって。

ちゃかしてるってことぐらい、分かってるから。

「嘘です。分かってますよ…お姫様」

これは、ちょっとした仕返しのつもり。

「誰か、凜姫様に剣を!」

「どうぞっ」

「ありがとう」

凜が、剣を持つ。

…その剣は…もしかして。

「どうじゃ、凜。持ち心地は」

「最高です。…使いやすそう」

「そうじゃろ。それはな、海瀬の者が、初陣を飾るときに使う刀じゃ」

やっぱり…海瀬に伝わる家宝。

「まあ、こんなもの初陣とは言わぬが。それでも、凜にとって初の戦と思え」

命を賭けることに、変わりはないから。

「…はっ」

凜は剣をとり、山賊の前に行く。

「…もう、負けぬぞ!」

「女になにができる!」 

「黙れ、山賊ども!」

俺が叫ぶと、辺りは静まり返った。

「…我が名は海瀬凜!海瀬の名に傷をつけた輩を、捕らえよ!」

「御意!」

凜、お前が望むのなら。

俺は相応の働きをしてみせる。