「蘭!本気でいいぞ」

「…御意」

もう、抑えは必要ない…。

「…死んでも、文句言うなよ…?俺は凜姫様みてぇに優しくねぇんだ」

「できるだけ…殺してほしくはないが…」

凜が呟くよりはやく、俺は敵に突っ込んでいった。

もう、知らねぇ。

凜を怖い目にあわせたこいつらを、許しておく必要はどこにもない。

…何人倒したか、分からない。

凜は…?

!?やばい!

「凜姫様!」

ガキンッ、と、凜の持っていた短刀が折れた。

「くそっ!」

…これ以上、凜に戦わせるわけにはいかない。

「…凜姫様は、ひたすら逃げていてください。後は、私が」

「ごめん、蘭」

謝るなよ。

俺はただ戦う。

凜はひたすら逃げる。

でも、それにも限度というものがある。

いつの間にか、相手は全て凜狙いになった。

「凜姫様!…卑怯だぞ、女を狙うなんて!」

やり方が汚いんだよ!

「俺らの目的は、最初からこの女だ」

「…復讐…されるようなこと、した覚えはないが」

確かに…言われてみれば、凜は別に何もしていない。

ただ逃げ出しただけ。

「うるせぇっ!…逃げたじゃねぇか、お前ら。それは俺らにとっちゃ恥なんだよ!」

知るかよ、お前らの世界の恥なんて。

そんな理由で、あの子を怖い目にあわせたってのか。

凜を狙うってのか。

「…許さない」

…俺の心の声が、声に出たのかと思った。

でもそれは凜の声で。

凜は今にも奴らにかかっていきそうだった。

「凜姫様、お止めください!」

それでも凜は…敵に向かって走った。

…止めろ…!

今の凜に、理性はないだろう。

怒りで…冷静さが欠けてしまっている。

凜を止めようと…名前を呼んだ……つもりだった。

「凜姫様っ」

聞こえた声は、また俺のじゃなくて。

「…え…」

凜の、動きが止まる。

その視線の先にいたのは…

「……お菊さん…?」

なんで…こんな所に…?

「なんでっ…逃げてよ…!」

「母上!?」