「…昔も、私が怪我をしたら、どんな些細な怪我でも…心配してくださいましたね」

俺も凜も、昔っからおてんばで。

しょっちゅう怪我してた。

凜も怪我が多かったのに、俺の心配ばかりしてくれてた。

自分のことなんて、二の次。

…凜らしいけど、今思えば、もっと自分を大切にしろよ…って思う。

「だって…蘭が心配だったから…」

「…そんなに心配していただかなくても、もう昔とは違います。…やっと、あなたを守れるようになったのですから」

やっと、守れるだけの力を手に入れた。

「そんなに強くならなくてもいいよ…」

「え…」

なんで?

強くなきゃ、凜を守れない。

大切な人を…。

「強くなったら、蘭、あたしを置いてっちゃうでしょ…。そんなの、嫌だよ」

凜…。

それでも、俺は…。

「…置いていくかもしれません。でも、必ず守ります。それが私の使命ですから」

凜を守るために、強くなりたかった。

逃げるだけじゃない。

大切な人のために、戦える強さがほしかった。

「…結局、あたしは何もできない。女だから」

女だから、何もできない?

「それは違います。少し…考え方を変えてみてください。…女だから、ではなく、女にしかできないこともあります」

「女にしか…できないこと?」

「もっと言えば、凜姫様にしかできないことです」

「…あたしにしか?何、それ」

凜は分からないといった表情で、俺を見る。

「…凜姫様は、他の誰よりもお優しい。他の誰よりも、愛情を持って、人と接していらっしゃる」

「それが、あたしにしかできないこと?」

理解不能と言ったような、複雑な表情を浮かべる、凜。

いや…すごいことだと思うけど?

「凜姫様は…もっと自信を持って良いのですよ?」

凜は自分を過小評価しすぎだ。

「蘭、あたし、前も言ったと思うけど…。あたし、蘭がいてくれればいいんだよ」

凜…そんな思わせぶりなこと言わないでよ…。

俺だって、凜がいればそれでいい。

でも…時々、不安になる。

俺は…本当に凜を守れていると、言えるのかと。

「蘭、勝手にどっか行かないでね」

もしかしたら、凜には何か予感があったのかもしれない。

本人も気づいていない、何かが。

「………もちろんです」

俺は…何故間を開けたんだろう。

凜の願いは…叶えるはず…なのに。

どこかで、その約束は守れないかもしれないと…そう、思ってしまっている自分がいるんだ…。