俺は赤くなった顔を隠したくて、左手で顔を覆った。

「…暑くはないですが…。ちょっと、離れていただけますか」

このままくっつかれてると…我慢できなくなる…。

「あ…ごめん…」

凜はようやく状況を把握したらしく。

大人しく離れてくれた。

ほっとしたのと、離れて寂しいのが混ざって…なんか変な気分。

「…蘭…大丈夫?」

「何がです?」

まさか、まだ顔赤い?

「傷…」

傷?

…ああ、凜庇ってできたやつのことか。

「…ああ、もう治りましたよ。平気です」

てか、忘れてたし、こんな傷。

「…ごめんね…」

「…謝らないでください。私は、凜姫様を守れたからそれでいいのです」

凜が怪我しなくて、本当によかったよ…。

「でも…ごめん。こんな傷…残っちゃって…」

そう言って、凜は俺の着物の袖をめくった。

「凜姫様?」

何がしたいんだ?

「…痛そう…」

まるで自分が痛いみたいに、顔をしかめる、凜。

いや、本当に痛くなんかないんだよ?

忘れてたくらいなんだから…。

「いえ、だから平気です。もう痛みはありません」

すると凜は、俺の傷に頬をくっつけた。

…凜?

「蘭……蘭…ありがとう」

「凜姫様…」

礼を言われる筋合いなんてないよ。

だって俺は凜を守るための存在だろ…?

いつだって、凜のそばにいて、凜を守る。

凜を守るなんて当たり前。

でも、凜はそれをいたわってくれる…。

だから、昔を…思い出してしまうんだ…。