「それが貴方達の幸せに繋がるなら、お譲りいたします」

シスターの言葉に俺達は同時に頭を上げた。

「えっ!??」

「い、いいい今なんてッ!?」

譲ってくれと言った本人が一番驚いている。

というか、日本語で聞いてもシスターには伝わらない。

落ち着いて、落ち着いて。

シスターが言葉を理解していないので『今何て?』とフランス語で言い直した。

「お譲りします、と言ったんです」

目をパチクリさせている俺達を見て、頭に“?”を浮かべるシスター。

冷静に、冷静に。

「どうして、そんなにあっさりと……」

俺は相変わらず舌使いが下手だ。

「私はマリア様の言伝を伝え、椅子の力で運気を上げて彼等の幸せに繋げています。でもそれは椅子の力に頼っているだけで、彼等はその事実を知らなくとも、自分の力で幸せになっている事にはなりません」

シスターは「それに…」と言葉を続けながら立ち上がった。