シスターの怒りは一言の謝罪で収まったのか、優しく微笑んだ。

「その椅子を、私達に譲って欲しいの」

謝罪はその為か。

図々しい女だと呆れてしまうが、フランスまで来たのは椅子を手に入れる為なのでエレナの要求に同意する。

「私は永遠の命が欲しいの。その為には運の椅子が必要なの。命を手に入れたら返しに来るわ!だからお願いっ!!」

身を乗り出してシスターに力説しながら、エレナは頭を下げる。

「俺からもお願いします」

舌使いが難しいせいで慣れないフランス語は片言になってしまった。

上手く伝えられたか自信はないが俺も一緒に頭を下げる。

正直こんな言葉だけのお願いで運の椅子を譲って貰えるなんて思っていない。

拒否か交換条件。

シスターは自分以外の人の為に、運の力を使用している。

奪い取る様な真似はできない。

シスターが言葉を発する為に息を吸ったのが分かった。

さぁ、どう来る?