「私にはマリア様のお声を言伝する事は出来ても、それ以外の事は何も出来ません。だから私はこの椅子の力を借りて、祈りを捧げた人々の運気を上げているんです」

初めてだ。

自分じゃない誰かの為に椅子の力を使うなんて……やはりシスターなんだと再確認した。

エレナも寿も、俺も含め自分の欲の為に力を使用している。

「あの人の、何運を上げたんですか?」

「彼の仕事運を上げてさしあげました」

もし椅子の力がすぐに反映し、大きな影響力があるのだとしたら、邪の椅子に続き運の椅子も使い方によってはオールマイティになるんじゃないか?

「……シスター、さっきは悪かったわ。その椅子を見つけられなかったのは、私たちの“運が無かった”からよね。謝るわ」

エレナが俺の背中から顔を出し、バツの悪そうに視線を彷徨わせながらシスターに頭を下げた。

しっかり目を見ろと背後から引っ張りだしてやりたかったが、プライドの高いエレナが素直に謝っているのだ、シスターには悪いが良しとしよう。

でも明日は槍が降りそだ。

「それで……シスター、貴方にはお願いがあるの」

「私に出来る事なら何でも仰って下さい」