地下室の電気を消し、背もたれの部分を掴んで慎重に階段を上がる。

シーツが掛かっていたお陰で椅子に汚れは無く、ホコリは俺の体にだけ付いていた。

リビングに置いてあるテーブルとセットのイスの隣に地下室から持って来た椅子を置く。

このテーブルとイスのセットは和華菜が選んだ物で、凄くデザイン性が高い。

そんなイスと並ぶと単調さが際立つ。

「やっぱり和華菜のかな?」

椅子を撫で、そっと座る。

「ん~…硬いなぁ」

長時間は座ってられない。

でも、それもこの椅子の魅力の一つなのかもしれない。

テーブルの上にTVのリモコンを発見したので、普段電気代削減の為に点けないTVの電源を入れた。

“貴方の人生のお手伝い!これで貴方も億万長者………”

それは宝くじのCMだった。

勿論、宝くじなんて買っても一度だって当たった事はない。

それに宝くじを買える程、金に余裕が無い。

そんなペラペラな紙に無駄金使うなら、母親に金を返す。

でも何故だが今回は買ってみようと思った。

小銭しか入っていない長財布をジーパンのポケットに突っ込み、さっそく宝くじを買いに出掛けた。