なるべくホコリが舞らない様に、ゆっくりシーツを取る。

「椅子……かぁ」

シーツをそっと床に置き、姿を現した椅子に触れる。

その椅子は単調な作りの木の椅子だった。

四本の足に、薄い木の板を付けた背もたれ。

小学校の授業などで作れるような、そんな椅子。

勿論俺が学生時代に作った物ではい。

俺は不器用だから単調な作りでも、こんな丁寧に上手くは作れない。

俺の物ではないなら、必然的に和華菜の物となるが…。

それは有り得ない。

和華菜は俺と違ってデザインにこだわっていた。

だから目の前の簡素なデザインの椅子が和華菜の物とは考えにくかった。

俺の物ではない、和華菜の物でもない。

まぁこの際、どちらの物でも構わない。

ここにあるのだから俺の物だ。

よく見れば見る程、単調な作りだと窺えるが、それと同時に不思議な魅力を感じる。

売り物にはなりそうにないが、俺はその椅子をリビングに持って行く事にした。