俺は赤ワインで煮込んだ鴨フィレ肉を慣れないナイフとフォークで食べる。

「美味いなぁ…。こんなの食べてると本来の目的忘れそうだよ」

一口サイズに切った鴨フィレ肉を飲み込んで、苦笑いをしてみせる。

「目的?」

…ツッコむのも面倒くさい。

冷たい視線を送ると、フフと笑われた。

「そんな目しないで、冗談よ」

エレナはニッと笑って、ブルーチーズを乗せたフランスパンをかじる。

「食べ終わったら、私に付いて来て。椅子の力を辿りながら行くから」

冗談を言ったかと思うと次の瞬間には真面目な事を言うのだから、コクリと頷くしか無い。

食後のデザートを食べ終えると、店を出て椅子探しを開始した。

「次の椅子は運だっけ?」

「そうよ。忘れないで」

エレナから冷ややかな視線を送られる。

「その目止めろ。みじめになる。…んで、どっちに行けば椅子があるの?」

左右に伸びる道を見ながら問う。