「じゃぁ…エレナさん。俺にお願いってなんですか?」

エレナはテーブルに置いてあったガラス製の灰皿に、まだ長い煙草を押しつぶして火を消した。

「大きな声じゃ言えないんだけど…これで貴方の体を買いたいの」

軽く此方に身を乗り出したエレナが五本の指を立てる。

「はっ!?」

言葉の意味を理解すると同時に、思わず大きな声を上げてしまった。

研修中の店員や、少し離れた席に座る数人の女子高生が俺を見る。

「ヤダッ大きな声出さないでよ」

エレナは二本目の煙草に火を点ける手を止めて、少し慌てた様子を見せた。

「あぁ…ご、ごめん」

周りの視線が俺から外されてホッとする。

二本目の煙草に火を点け、上を向いて吸い込んだ煙を吐き出す。

「五万払うから私を抱いて欲しいの」

何を言っているんだと唖然とした。

「それ…本気で言ってんの?」

「もちろん」

本気の顔で即答され、俺の方が恥ずかしくなってしまう。