ドキリと心臓が跳ねた。
それは恋愛的な意味ではなく“しまった”という意味でだった。
以前、帰り道がたまたま同じだった女性にストーカーだと疑われた事があったからだ。
俺は目を逸らして前だけ見て歩き続けた。
「ちょっと」
すれ違う所で声をかけられた。
きたっ!と内心悲鳴を上げる。
「はい?…あの、何か…」
サングラスの向こうを見ることが出来ない。
「見てたでしょ?」
じぃっと顔を覗き込まれ、ゆっくりと視線で追い詰められる。
「あの…すいません。でも、そんなつもりで…た、ただ綺麗な人だなって思って、そ、それで……」
叱られた子供が言い訳をする様に俺はおずおずとしながら話した。
「ンフフ…」
美人な女性は上品に小さく笑った。
「そう。…ねぇ、貴方にお願いがあるの」
サングラスを取った美人は背が低いので、自然と上目遣いになる。