奏人が、遥を眠らせた。
護身術の壺だった。
僕も、奏人も、自分自身の身は守れるようにと幼少児から、護身術を身に着けさせられた。
それだけ、危ない環境に育ったも言えるんだけど、それが、この場で活きた。

遥を眠らせて、保健室まで運んだ。
迎えに来た新藤の使いに、事の次第は伝えた。
新藤の当主を通して、後日謝罪をしますと言って、遥を連れて帰って行った。

遥が入院になるのか薬治療になるのかは、わからないけれど、神経を休める必要があるだろう。

奏人と加奈は、「これで、智恵子ちゃんへのイジメがなくなるといい」と言った。
本当にそう思った。
どれだけ、言われのない事に耐えてきたのだろう。

あの「別れよう」は、智恵子のSOSだったんだと思った。
そして、つきあっては、ずっと遥のことを指してたのだろう。
でも、さすがに、自分をイジメ続けてる女のところに、僕をいかせたくなくて、「自分の気に入った女」なんてしたんだと思った。

今までの事が、わかってくると、智恵子は、きっと美和のことでも泣いてると思った。

こんなに智恵子のことを見えてなかったんだと思う。
だから、声を殺して、智恵子は泣くんだと思った。

智恵子を声をあげて泣ける女にしてあげたいと思った。
声をあげて泣ける。
それは、幸せと言う証じゃないか。

そして、僕は、美和と別れる決意をした。