「それが、理由なのか？本当に。」と言うと
「そう。」と加奈は言った。

そして、「智恵子ちゃんは、遥さんの婚約者を取った卑しい女って、罵られたり、冬哉を早く遥さんに返せと言われながら、あんな怪我をしてたの。」と言った。

「何度も、冬哉に言おうって、説得したのよ。」
「でもね、智恵子ちゃんは、あんな言葉で傷ついてないですよって笑うの。」
「でね、傷ついてるのは、私にふゆ君を取られちゃったと思ってる人たちなんですと言うの」と話ながら加奈は泣いてしまった。

奏人が「加奈。もういいよ。わかったから。」と抱きしめて慰めた。

「奏人。」と言うと奏人が「わかってるよ。智恵子ちゃんの為にもな。」と言った。

そして、奏人は「加奈。ここで冬哉と待ってて。」
「新藤　遥を呼んで来るから」と言って、部屋を出て行った。

しばらくすると、少し興奮気味の新藤　遥が、部屋に入って来た。

加奈がいる事に、少し違和感を覚えたみたいだったが、奏人のカノジョという事で、納得したようだった。

「冬哉君が、私に特別な用事って何？」と遥が聞いてきた。
「新藤にさ、聞きたい事があるんだよね。」と僕は言った。
僕は、わざと新藤と呼んだ。
遥が、気にいった男にはと遥と呼ばせたがるのを、利用した。

「冬哉君。新藤じゃなくて、遥って呼んで。」
「なんで？　僕は、ただのクラスメートを下の名前で、呼び捨てにしたくないんだけど。」と言った。

遥は、プライドの傷ついた顔をしていたけれど、まだ耐えていた。