母は、吸血鬼。
 そんな衝撃的な事実を知った私、葉山カノンは、撮影所から帰路についていた。

 私を守るために、嘘をついていた――いや、真実を隠していた母。
 その母に、私が真実を知ったということをどう伝えようかと考えていた。だけど、上手い言葉が思いつかなかった。
 今まで、自分が吸血鬼だということで傷ついたことがあるであろう母。
 どんな言葉で、私は彼女に伝えれば良いのか、どんな言葉なら、彼女は傷つかないのか、 ぐるぐると考えのまとまらない頭で歩いていたら、いつの間にか家についてしまっていた。

「・・・ただいま」
「カノン?おかえりなさい」

 声をかけると、母が笑顔で迎えてくれた。
 母は、丁度リビングで洗濯物を畳んでいた。

「どうしたの?浮かない顔して」

 ソファに座って母を手伝う私を見て、母は首をかしげた。

「・・・お母さん」
「何?」

 言葉が、出てこない。だけど伝えなくちゃいけない。