もう耐えられそうにないと思った時、何も聞こえていなかった小夜を呼ぶ優しい声が耳に届いた

「……さ…や…
…さあ…や!さあや!」

胸の前で握りしめた手を暖かく包み込む感触にそっと目を開けた


…っ!!遥…さん…

車の中へと長身を折り曲げて乗り込み、膝をついて手を握ってくれている

「小夜…会いたくなったから追いかけて来ちゃったよ!
スープを作ってきたから食べてくれないか?」

いつもと変わらぬ爽やかな笑顔で小夜の固まってしまった心を溶かしだした

心と一緒に動けなくなっていた小夜の体も、包まれた手から鎖がほどかれたように軽くなる