眼鏡をゆっくりと外し目頭を押さえながら良ニは口を開いた

「それが理由かね?
見合いというものは別に好きでなくとも結婚する
相手に望むことはそんな低次元ではない
まだ学生の君には分からないかもしれないが…
君との縁談は家同士が決めた事だ
個人的な意見や感情はいらない
分かったかね?」

言い終わるともう用はないとばかりに手元のファイルへと視線を戻した

悔しそうに拳を握る小夜の肩に、手を置いた良孝が低い声で言った

「もう分かっただろ…
小夜さんの申し入れなど無駄だ…
行こう」

書斎から連れ出そうとする良孝の手を小夜は振り払った