小夜の声を聞き少し安心した声に変わった

「今…ホテルにいるのか?
…そうか…良かった…
ごめん…
まだ…戻れないんだ…」

いつもの自信に溢れた声ではなく、元気のない疲れたような話し方だ

どこにいるのか…
いつ帰ってくるのか…
まだ環さんと一緒にいるのか…
環さんとはどんな関係なのか…

聞きたいことだらけだが、今は聞いてはいけない気がした

遥の声を…息づかいさえも聞き逃さぬように電話を耳に押しあて息を潜めた

けれども次に聞こえてきたのは今、一番聞きたくない人の声だった

「小夜ちゃん?私よ!
遥は私と一緒にいるの…
あなたもパリの街を楽しんでね
ピッ…ツー…ツー…ツー」

勝手に喋り、勝手に切れた

…環さんと一緒…
まだ帰れない…

二人から告げられた悲しい事実に携帯を持つ手が震える

…駄目…決めたんだもの…
ハルを信じる…信じて待っていなくちゃ…
ハルはあたしのことをずっと待っていてくれた…
ちゃんと思い出すまで…待っていてくれた
今度はあたしが待つ番…

遥から贈られた御守りのネックレスを握りしめた