…こんなに朝早くからどこに行ったんだろう?
お店はまだ開いてないし…
遠くまで出掛けたのかしら…
まあ…ここで待っていれば帰ってくる…よね?

小夜は膝を抱えたまま、遥がドアから"ただいま~"といつもの笑顔を見せてくれるのを待っていた

ベッドサイドの目覚まし時計は規則正しく回り、何度も短い針を追い越していく

気がつけばとっくに昼を過ぎてしまった

二日酔いの体は怠く食事を買いに行く気力も湧いてこない

…ハルは食事をしたかな?
あぁ…トニーさんのお店も素敵だったな
気取らずに美味しい料理を食べられる地元の定食屋さんて感じで…
アハッ!"セシャ、イイユデ、ゴザンス"って生で聞いちゃった!
ハルは今…セシャ、イイユデ、ゴザンスなのかな?

静かな部屋に携帯の呼び出し音が響いた

…フランスでも鳴るんだ…
って…ハルから?

ベッドから飛び降りて携帯を手にした

「ピッ…さあや!」

小夜の耳に一番聞きたかった遥の声が流れ込んだ

「うん…ハル?」