「まぁ。私のは悪い例だから。反面教師ってことで」


「なによそれー」

ソファーに深く腰掛けて、近くにあった抱き枕を思いっきり抱きしめる優子


「…でも、処女気にしてるわりに、彼氏作ろうとしないのは何でかなー?」

「作ろうとしない、じゃなくて作れないもん…女子大だから出会いないし」

女子大だからなんて、言い訳に過ぎない。

学内で出会いがないからといっても、友達の紹介や合コンなどをすればいくらでも男と出会えて、そこから発展して付き合う可能性もあった。
優子自身、見た目は上の上で可愛いので大学に入ってからも他大学の男からよく言い寄られていた。

でも、あえて作らなかったのは、男と付き合うことによって最終的にすることになる、性行為を避けたかったからだ。

優子にとってセックスはトラウマであった。
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小学校三年生の夏、優子は真夜中に突然目を覚ました。それは尿意を感じたからなので、すぐさま優子はトイレに向かった。トイレに行く途中で、両親の部屋の前を通るが、その日はたまたまドアが半開きで中から呻き声が聞こえた。
優子は声を殺して中をみると


そこには両親の性交をする姿があった。
汗ばみながら激しく腰を振る二人。泣きながらよがる母の姿に幼い優子はショックを受けた。


そんなトラウマもあり、優子はセックスに対して否定的なイメージを持つようになった。

セックスは未知の領域で、あの太い棒がどうやったらこの中に入るの?女の子は絶対痛いよね。無理だよね。という認識で、まして自分がそのようなことをするなど想像できないような行為で。


未知なる行為に対しての恐怖感と、恋人同士ならゆくゆくはしなければならない変な義務感が、辛くて、怖くて、男と付き合うことに疲れたのである。