「あ、優子」
「そーちゃん…」
会いたくない人に会ってしまった。
3話「従兄弟の性教育」
小腹がすいていたので、バイト帰りに喜屋武くんとケンタに立ち寄ることにしたが、入口で従兄弟のそーちゃんに遭遇した。
そーちゃんは二段重ねた箱が入ったビニール袋を2袋、両手に提げている。
「…すごい買ったね。」
「あーこれ、職場の奴らの晩飯。買い出し頼まれたの」
納得していると喜屋武くんが私とそーちゃんの顔を続けて見ていたので、喜屋武くんにそーちゃんのことを簡単に紹介した。
「初めまして!俺、喜屋武隆って言います。優子さんのバイト仲間で、いつもお世話になってます。」
「おー喜屋武か。よろしく!」
聡介は笑顔で喜屋武に手を差し出し握手を求めた。ホッとした表情で喜屋武も手を握ったが、聡介は喜屋武の何十倍もの握力で握りしめた。
「いっ…!」
握り潰すかのように手加減なく手を握る聡介に、喜屋武は思わず顔を歪めて小さく奇声を発した。優子は、たまたま喜屋武の後ろにいたので、背中しか見えていない。
不思議そうにこちらを見る優子。聡介は笑顔のまま、キツく喜屋武の手を握り締める。
やっと手を離したかと思えば、妖しげな笑みを浮かべて、優子にこういった
「優子ー!明日の夜泊まりに行くから。宜しくな」
「えっ、来るの?」
「真理子ちゃん(姉)には連絡したから。一緒に風呂入ろうなっ!」
「何いってんの!入らないから!」
(一緒に風呂?泊まり??この人、優子さんの従兄弟だよな?)
喜屋武が呆然としているのを見て勝ち誇った顔をする聡介。
「照れんなって。じゃあな」
手を振り立ち去る聡介。喜屋武は強く握り締められ真っ黄色になった掌を見つめながら茫然自失していた。