漫画のように再び鼻血を吹き出した彼に「なんで!?」と突っ込む優子であったが、内面は冷静であった。
(えっと、鼻血出した時って…確か冷やすと止血しやすいよね)
すぐに店長を呼んだ後、冷凍庫から保冷剤を取り出しタオルにくるむ。
出血部位を心臓より高くするために、倒れている男の上半身を頑張っておこして、前傾に座らせ、鼻にガーゼをつめた。
喜屋武が目を覚ましたのは、それから10分後のことだった。
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「本当にすいませんっした!!!」
申し訳なさそうに、何度も頭を下げて謝る彼に、優子はいいですよ!といって頭を上げさせようとする。
因みに今は着替えも終わって、二人でレジに入っているが、従業員が従業員に向かって何度も頭を下げているので、店内にいるお客さんが不思議そうにこちらを見てきた。
(なんでもいいから、早く顔あげて!喜屋武くん!)
先ほどの更衣室に乱入してきた青年は、喜屋武隆くんで、今日から新しく入った研修生である。
全体的に金髪で、横に垂れ流した長い前髪と右耳についたシルバーのピアスが特徴的だ。
背は一般的な男性の身長で、彫りは深くなかなかのイケメンだ。
「まさか、人入ってるとは思ってなくて…マジですいません。見たもの全部忘れるんで、頭強く叩いてください!!」
「叩けるわけないよ!本当にいいから」