可憐が独りでポツリと酒を飲んでいた俺に歩みよった

そして恥ずかしそうにこう言った


『佳寿さんって彼女とかいないんですか?』


俺はその一言で地獄に落ちた

可憐が頬を紅くそめて小声でつぶやく…


多分俺はその時酷い顔をしていただろう


まさに今までの期待が裏切られた瞬間


可憐はあの佳寿の事を思っているのか?


俺の恋はいつもそんなだった


だが、いくら佳寿でもこの恋だけは諦めたくは無い…

俺はグルグル回る頭の中で必死に答えを考えていた


今日は可憐にもっと俺の事を知ってもらうつもりで意気込んで来たんだぜ


それなのにどうしてこんな…



『俺はアイツが誰かと付き合ってるとかは分からない…そんな話しないから』



『そうですよね…ごめんなさい。いつも佳寿さんといて、一番仲いいと思ったから…あっこの事は佳寿さんには内緒にしておいて下さいね』


可憐は気まずそうに言った


きっと可憐は俺のそんな気持ち知りやしない


すると向こう側から山田がやって来た


そして可憐にこう言った


『俺は可憐ちゃんの事応援するよ!佳寿は優しいし、家族思いだし真面目だ!一回遊びに行ってみなよっ』


俺はたまらずその場から離れた


そうしないと自分が惨めでたまらなくて…
そして可憐のその笑み、きっと佳寿に対する期待が見て取れた

そしてそんな可憐の顔が見てられなかったから…


結局俺は今まで一人相撲を取っていただけだったんだ

『山田の奴!仕事も満足に出来ないくせに…何が応援するだよ!くそっ』


俺は結局誰にも告げずにそのまま家に帰る事にした


俺の辛く刹那い恋はそれから始まった