その事件の後


またいつものような毎日が始まっていた。


ラファエルの両親は家に戻ることがなく、仕事の毎日。

私は彼と大学の講義を受ける。

という変わりない毎日。


だが、明らかにラファエルはどこか変わってしまっていた。

もう何を話しても、いつもどおり接し続けても・・・

彼は一度も誰にも、笑顔を見せることがなくなった。


寂しい瞳がより印象的になってしまった。



そしてある日

いつものように昼食を中庭のテーブルで食べているときだった。

といっても彼はあまり食事をすることはないのだが・・・。



「わかっていたんだ、本当は。」


急に彼はそう言った。

独り言のように頬杖をつきながら、サンドイッチを頬張る私に。


「え・・・?」


悟は口の周りに付いたパンくずを拭いながら聞いた。


「いつかはこうなるってことは・・・。うすうす。」


両親のことを言っているのだとすぐにわかったため、悟は表情を曇らせた。


「わかっていたさ。
このままずるずる日々を送っていても、いつかは壊れるだろうと。
伝えないといけないことを、あの人たちに言わずに終われることはないだろうなって・・・。」


遠まわしでわかりにくい言い方だったが、私にはなんとなくすべてがわかった気がした。