・・・一度もない・・・。


その言葉は、悟にもそこにいた誰にも深く刺さる言葉だった。


ラファエル・・・。



その瞬間、主人の鉄拳がまた彼に振り下ろされそうになった。


私はたまらず止めに入った。


「やめてください!!」


その声に反応した三人は動きを止めた。

悟はラファエルに駆け寄って、慌ててその場にあった濡れたタオルを彼の頬に当てた。


「事情は知りませんし、僕が部外者だってこともわかっています。
だけど、暴力はよくないです。彼を殴って何になるって言うんですか・・・。」


ラファエルは息をつくと、崩れるように座り込み、顔をしかめた。

しばらく主人は無言で息子を見下ろし・・・

やがて何も言わずに奥の部屋へと消えて行った。




使用人たちはざわざわと荒れたテーブルや家具を片し始める。


静まり返るリビングで、悟は彼の赤く腫れた頬を冷やし続けた。



「痛いか?」



彼は苦笑して、小声でありがとうと言った。



金色の瞳に涙を溜めて・・・。