「今まで好き勝手にさせてやってきただろう!その恩をあだで返すというのか!この親不孝者が!」


主人はすごい形相で怒り散らす。


ラファエルは口から流れた血を拭って、小さく鼻で笑った。


「いい加減にしてほしいのはこっちのほうだ・・・。
望んでもない衛生教育を受けさせて・・・。
自分の思い通りなる子供がほしかっただけなんだろう?」


彼は怒りがこもった瞳で二人をにらんだ。

しかし、その瞳は今にも涙が流れそうなくらい哀しい瞳だった。


主人は妻の腕を振り払い、つかつかと彼に歩み寄った。

ラファエルは咳き込みながらよろよろと立ち上がる。

主人は彼の胸倉を掴んで吐き捨てるように言った。


「ここまで愛情込めて育ててくれた親に言うことかそれは。
自分の跡取り息子になるよう自由に何でも学ばせてやったんだ。
私の会社はお前が継ぐことにもう変わりはない!」


そこまで状況を伺っていて、悟にもだいたい理解できてきた。


「あなた・・・やめて・・・。」


奥様は弱々しく言いながら主人に歩み寄る。


するとラファエルは、また同じように吐き捨てるように言った。


「フ・・・。あい・・・じょう?
愛情なんて、最初からなかっただろう?
あんたらと初対面のときから今まで、そんなもの感じたことは一度もない。」