「それがわかったから、おじ様は父のことが心配だったんですか・・・?」


彼は私に視線を向けて、静かにうなずいた。


「そうやっていくうちにね、彼らは誰もが感じるような感情を持たずに大人になっていってしまう。」


恋愛の中での嫉妬や怒り、愛しいと思うことや、自分が素直に誰を好きだと思う気持ち。

本来ならばそんな感情は、自分を素直に表現しようとする十代のうちに誰もが経験することなのだ。

例え拒絶したい自分の気持ちがあったとしても、葛藤して続いてゆく心情。

自分という人間を無意識に育てようとする人間の本能が働いて、きっと気づいてゆくものがたくさんある。


人の感情・・・人の気持ちを。


そして理解し、誰かと向き合うということの大切さにも気づく。


そのすべてが自分を育てる肥やしになる。


そしてそれがきっと、「生きる」ということなのだろう・・・と。

そう悟るかどうかも、きっと自分次第。


「泣いて笑って、悔しくても辛くても前に進んで、豊かな感情を繰り返して人は大人になってゆくのかもしれない。」


アリスは語る彼の話しを無言で聞き入っていた。


「人間同士の係わり合いというのが、きっと大事なんだろうね。」


おじ様はそう言って優しく笑いかけた。

私も笑顔を返した。