「今度、久しぶりに近くでコンサートをすることになったんだ。」


ラファエルからそんな話を聞いた頃、私はアイリスから恋愛相談を受けるようになっていた時期だった。


「そうなのか。いつ?」


お互い学業が忙しく、部屋で話すのも久しぶりだった。


「再来週の日曜日。小さいホールだけどな。」


どうやら彼は今回のコンサートで音楽活動を終えるつもりらしい。

地元のファンの声に応えて、近所の知り合いがホールを提供してくれたという。


「そうか・・・。音楽辞めるのか・・・。」


普段からの彼を見ていればわかっていたことだったが、残念でならなかった。

天才的な才能を生かす道を、彼は選ばなかったということなのだ。

彼からすれば、もうできてしまうことなど興味がないのだろうか。


「・・・何でお前がそんな顔をする。」


色んな人から評価が高い彼が、音楽を捨てることは悟にとっては疑問に感じることではあった。

だが何より、彼女・・・アイリスがラファエルに好意を持ったのは彼のコンサートだったというのに・・・。

きっと彼女ももったいないと思うに違いない。