「次は何をするんだ?ってね・・・。」


やりつくしたら、大学のカフェテラスの窓際でボーっとするのだという。


普段から張り詰めたような厳しい目つきをしている彼が、気の抜けた表情をするのはそのときだけだった。


「私の記憶での父は、少なくともせかせか何かを勉強しているような人じゃなかったです。温厚で、休日にはどこかへ連れて行ってくれる、優しくて笑顔が素敵な・・・」


「ハハハ、じゃあその彼は大学時代の反動なのかな。私が知るその時の彼は、無口で、無愛想で・・・話す相手も決まっていた。」


アリスはなんだかおかしくて微笑んだ。


「でもね、もちろんだけど、有名人だったからそりゃあ大学の人は誰だって彼に興味津々だったんだ。」


無駄な人間関係は嫌いだったのか、ラファエルは大学での人付き合いを最小限にしようとしていたみたいだった。



「だけどなぜか、よく一緒にいた私のほうが彼のことで質問攻めにあうことも多々あったよ。」


悟もまた懐かしそうに微笑んだ。


家では彼が今まで学んだものの話をよく聞いた。

音楽の話が多かったが、彼はすでにそのときはまったく違う将来のことを考えていた。




「会社を作る?」


脱線話に花が咲いていたラファエルの部屋で、私はコーヒーを噴出しかけた。


「ああ。」


「か・・・会社って何の?」


「それは色々考えてはいる。最近は株のことも勉強しててな。」


はぁ・・・となんとも言えない思いを抱え、悟はまた一口コーヒーを飲んだ。

正直彼は何がしたいんだろうと常日頃から思ってはいたが、ころころ変わるのでとくに
突っ込んだことは聞いたりしなかった。


「ご両親はなんて?」


「何が」