「あの、すみません、私アリス・クラウドと言います。神咲悟さんのお見舞いに来たんですけど・・・」


「はい、少々お待ちください、病室確認いたしますね。」


広い院内は受付などを行うフロントだけでも、
会社の事務所と同じ広さくらいありそうに感じた。


時々患者同士と思われる子供たちの元気な声も聞こえる。

大きな病院に来たのがはじめてのアリスは、あたりをきょろきょろ見渡した。


真っ白な院内は出来たばかりの建物の中のようで、とても綺麗だ。

たくさんのソファが並ぶ奥には緑の庭が見える大きな窓もある。

冷暖房設備が管理されている受付近くでは、人がよく集まる場所なので液晶テレビまである。


新鮮な風景に見とれていると、足元から不意に声がかかった。


「きれ~い」


彼女が視線を落とすと、かわいらしい女の子が目を輝かせていた。

患者用のパジャマを着ている7歳くらいの少女は、にこにこして手を伸ばしてきた。


「あ・・・これはお見舞い用に買ってきた花なの、ごめんね、あげられないわ。」


アリスがしゃがんで花束を抱えて言うと、
少女はさらさらした黒髪をなびかせて首を横に振った。


「違うの。お姉ちゃんの髪の毛!綺麗で金色の太陽みたい!」


少女は瞳を輝かせながらそう言った。

アリスは微笑みを返して「Thank you」と愛らしい少女の頭をなでた。

すると少女はさらに瞳を輝かせてアリスに問いかけた。


「私お姉ちゃんのこと知ってる!絵本の中で見たよ!『不思議の国のアリス』のアリスでしょ!?そっくりだもん!」


「え・・・。」