疑問を浮かべては色んな推測をした。

だがすべての疑問の答えはまったく出てこない。

軽くため息をついた彼女は、とりあえず昨夜のお礼と社長のことについて電話で話してみようと彼の番号を探した。


そして電話をかけようとボタンを押しかけ、手が止まった。


「・・・・。」


あの豪雨の日のことと、昨夜みた夢の中の彼の顔が頭によぎった。


雨に打たれ、苦しそうな表情をした彼・・・。

思い出すと胸が締め付けられる思いがした。

夢の中での彼は、やはり悲しそうな顔をして私に聞こえない声で何かを言っていた。


「シュラ・・・。」


無意識にそうつぶやいて、携帯を静かにかばんにしまった。

彼の悲しそうな表情を繰り返し思い出すたびに、
「今は何も聞かないでくれ」
と彼が言って泣いているような気がした。


私には何がなんだかわからないから、彼の過去も事情も何も知らないから、きっと無神経に何でも聞いてしまう。


今それをすれば彼を深く傷つけてしまうことになるような気がした。


彼の涙を見なくない私は・・・きっと今彼に会っちゃいけないんだ。


確証のない直感を信じて、彼女タクシーを降りた。


そして見舞いの品を購入し、大きな総合病院に入っていった。

大きな庭や噴水まである風景に少し驚きながら、
広いフロントのナースステーションで病室を聞いた。