色が違う両目も、漆黒の髪も・・・本当に異質だ。
何が神の名だ・・。

少し鼻で笑い深く一吸いして席を立ち、吐き出した。
皿を次々と片す。

イギリスのどこかで産まれ、俺は1歳にも満たない頃、下町の孤児院の前に捨てられた。
その後15まで孤児たちの中で暮らした。

テキパキと着替え、白いジャケットに腕を通した。
姿見で髪を手櫛で直し、襟を引っ張った。

まじまじと自分の姿を見てみた。

自分ではなんとも思わないが、珍しい容姿らしい・・。

父は
英国人でも珍しい色の違う両目。
母は
美しい漆黒の髪。
そして赤ん坊の自分につけられていた二つのピアス。
そこには名が刻まれていて、それがわかるとイギリス中に俺の存在が知れた。

当時では英国人とドイツ人のハーフの作曲家と、日本人の天才バイオリニストの夫婦は有名で・・・「天才夫婦が海へ心中した」とも有名だった。
世の中の騒ぎ立てる声に落ちつぶされた俺は、自分の存在がわからなくて、自分が異端児のような気がして・・・。
誰かに、「何も気に病むことはない」と言われるたびに、自分が何かに押しつぶされていくような・・・
遺伝子の
魂の威圧を感じ続けてきた。

自分の左耳についている二つのピアスは己の証であると同時に、自分が間違いなくあの両親の子供だという証でもある。
何度かピアスを取ろうと試みたことはあったが、つなぎ目は完全に鉄を溶かしたように固められていて、一つの輪のように離れない。
無理やり取ったとしても、もう一つ同じようについている二つ目をとる気にはなれないだろう。
一つ目を取った激痛を知りながら、もうひとつとる勇気があるはずがないのだから。
もしかして、それを見越して二つつけられたんだろうか・・・
それは定かでない。
生まれたばかりの赤ん坊の自分に、なぜそれを無理やりにでもつけなければならなかったのかさえ謎なのだ。