思い返せば思い返すほど、何が原因で彼はあんなにも取り乱していたのかわからない。
もっと詳しく何が彼の心を乱したのか考えようとしても、具合の悪い頭で考えられることはなかった。

しばらくボーっとそんなことを考えていた彼女は、立ち疲れて食欲もなくし、かるく水を一杯飲んでまたベッドへ戻った。
とりあえず具合の悪い頭じゃ何も正常に考えることが出来ない。
深くため息をついて、一日着たパジャマを脱ごうとしたとき、玄関のインターホンが鳴った。
マンションの下に訪ねてきた誰かをカメラ付きインターホンで確認すると、驚いて凍り付いてしまった。

シュラ・・・。

そこには帽子を深くかぶっているが明らかにシュラだった。
ブルーとグリーンの瞳が見えたのだ。
彼は静かにインターホンの前で返事を待っている様子だ。

戸惑いながらも、とりあえず応対することにした。

「はい・・・、シュラさん?」

すると彼は声が入るスピーカーのほうを向いたまま答えた。

「悪い、急に訪ねて・・・ちょっと話があって・・・。それと会社に行ったらあんたが風邪で休んでるって聞いたから見舞いに。色々見舞いの品持たされたから、届けに来たんだ。」

淡々と話しているが、今にも消えてしまいそうなか細い声で彼は言った。
彼も具合がよくないのか、かすかに見える顔色は悪かった。
アリスは鍵を開けて、シュラが来るまでに急いで着替えを済ませ、部屋を片付けた。
あのシュラが自分の部屋にくる・・・なんて緊張感は今は持ってられない気分だった。
具合が悪すぎてまともに訪問者を迎えられる状態じゃないからだ。

いよいよ呼び鈴が鳴り、ドアを開けると帽子をかぶった幼い表情の彼が大きな瞳で私を見つめた。