その頃シュラは、ベッドの上を片付けて軽くため息をついていた。
社長から言われたことを思い出していたのだ。

「君は女性の扱いに慣れていないからね。まぁ私も慣れているわけではないが・・。いくら仕事仲間の女性だからといって、気安く口を利いたり触れたりしてはだめだ。それがマナーだからね。まぁ気に入っている女性やより関わりが深い人とは例外だけど。だからといって女性を避けてはいけないんだよ?これは君の将来のためだ。」

なまじ記憶力が言い分、そんな社長のセリフをすべて思い出していた。

そしてさっきのアリスに対する対応がまずかったかもしれないと、思いながらも、うまく人と関わることができない自分に歯がゆさを感じていた。
頭をかきむしって、仮眠室を出た。

荷物をなんとか見つけた二人は事務所から出た。
すると雷は収まっているが、雨はいっそうひどくなっていることに気づいた。

「あ、よかった・・・。雷収まってますね。」

アリスが傘を持っていないシュラのために、傘をかざして彼のほうを見ると、さっきまでの彼の顔色とはだいぶ違っていることに気づいた。
事務所入り口前で、雨音が激しく響く。
そしてシュラの表情はみるみる険しくなっていった。