すると外から次第に雨音が激しくなっていった。
時折雷がゴロゴロと鳴り始めている。

アリスは雷が大の苦手だった。
別に何か特別なトラウマがあるわけではない。
ただ苦手だった。

どうしよう・・・。今傘さして帰ったら危ないかな・・・。

その瞬間、建物全体が光を浴びたように、激しい雷の落ちる音がした。
と同時にアリスは悲鳴を上げた。
雷の強い光は容赦なく彼女を何度も貫くように、目がくらむほど光り続ける。

アリスは思わず頭を抱えてしゃがみこんだ。
知らぬ間に嗚咽が漏れる。
すると静電気がはしったような大きな電気の音がしたと思うと、天井の電気が消えた。
アリスは何がなんだかわからず混乱して立ち上がることもできない。

すると冷たいものがアリスの頬に触れた。
そして対照的な暖かい腕で彼女は包まれた。

「シュラ・・・さん・・・」

彼からするいつもの淡い香りで暗闇でも理解できた。目を覚まして私の側にいてくれているのだと。
暗闇で表情はわからないが、恐怖から開放された安心感で彼女は彼にしがみついた。

「すみません・・・起こしてしまって。私、雷苦手で・・・」

途切れ途切れにそう謝罪しながらも、しがみつく手の力は余計に強くなり、彼の体に顔をうずめた。
彼は少し躊躇しながらも、震える彼女を抱きしめた。
そして耳元で落ち着くよう話し始めた。

「しばらくすれば勝手につくだろう。とりあえず雷と雨がおさまるまでここでじっとしてよう。」

そういうと彼はゆっくり彼女を引き離し、部屋の中を手探りでたどり懐中電灯を見つけ出した。
アリスは部屋に光がつく前に涙をぬぐった。
明かりがつくと部屋のベッドと窓が見えた。どうやら外は豪雨で雷も時折近くで発生しているようだ。
日本でこんな天気は珍しいはずだ。
懐中電灯のオレンジ色の光に目を細めながら、ベッドを整えて腰掛けた彼を見ていた。
薄暗く狭い部屋の中、雨と雷の音だけが響き、湿った空気が窓から伝わってくる。

シュラは震える彼女に手を伸ばして細い手首を掴んだ。