ファイルや書類をまとめ、適当にテーブルの上を片付けていると、さっきまで部屋の奥のソファで仕事をしていたシュラの姿がないことに気づいた。
マグカップを洗い終えると、広い部屋に声を静かに響かせて、彼を呼んだ。
時々音の調整をするレコーディング部屋にもいない。
資料室にもいないし、外に出て行った形跡もない。

だいたい外出してたら気づいてたよね。
どこにいるんだろう・・・。

しばらく部屋をうろうろと探し回ると、レコーディング部屋の横にカーテンがかかった狭いスペースがあるのに気づいた。

荷物置き場かな。

新入社員のアリスはまだ広い事務所の部屋の一つ一つを把握しきれていなかった。
ドアもなく、ただ肌色のカーテンだけがかかっている。
アリスはいないだろうと思いつつも、彼の名を呼びながらカーテンを開けた。

「シュラさん・・・?」

中は薄暗く小さな電球がついているだけだった。
廊下のような部屋だが、ソファと小さなテーブルがある。
アリスはゆっくり中へ入り、辺りを見回した。
少し暖かい風を感じたので天井を見上げると、エアコンがついていた。
すると物音が聞こえ、アリスは目を凝らして奥を見つめた。
よく見ると、部屋の奥にはシングルベッドが置いてあった。
恐る恐る近づいてゆくと、ベッドの隣に小さなテーブルの上にランプもあり、ベッドの毛布が人を包み込んでいるように盛り上がっていた。

誰か寝てる・・・?

さらに近づくと、頭の部分が見えたので誰だかすぐわかった。

「シュラさん、あの・・・。」

起こしちゃダメかな・・・。
そういえば泊りがけで仕事してるんだっけ。今日も泊まるつもりで仮眠をとってるのかも。

シュラは体を丸めて縮むように伏せていた。