「それでさ、その子供が珍しいことに、四つ子なんだって。本当にあるんだな、そういうのって。」

「四つ子!?それはすごいですね・・・。奥さん大変そう。」

だよな、と彼も苦笑した。

その四つ子とも両親の血を受け継いだ音楽兄弟になってるらしい。
どちらの才能の影響も強く、現在10歳ながらも一人ひとり、かなりの天才っぷりを発揮しているとか。

「きっとおじ様とその美人の奥様に似て、可愛いんでしょうねぇ」

「ああ、写真は見せてもらったことあったよ。可愛かったな。でもやっぱ四つ子だから顔は皆そっくりだったけど」

シュラでも小さい子を可愛いって思うんだ。

「そうでしょうね。10歳ってきっとすっごく可愛いんだろうな。私今度おじ様のおうちに遊びに行きたいってお願いしてみようかな。四つ子ちゃんに会いたくなっちゃいました。」

「そうか。俺もちょっと見てみたいよ。社長がさ、長男が少し俺に似てるとか言うから」

「え!それはますます見てみたいです。」

シュラ似の長男・・・。じゃあおじ様とシュラが少し似てるってことなのかな。

「社長が言うに、『君に似て強情でわがままそうな顔をしている。』だってよ。」

アリスは声を殺して笑った。

こうしているとなんだか一緒に登校している高校生になったような気分。

そんなことを思いながら、ふと視線を上げると、次の駅に止まりかけていた電車の窓から、厚い雲が空を覆っているのが見えた。

確か予報では
今日は午前から天気が崩れ、一日中雨となるでしょう。

「今日は、ずっと雨になっちゃうみたいですね。」

アリスは何気なく言った言葉だった。

「ああ、そうだな・・・」

思った以上に彼の言葉が重く聞こえたので、表情を伺うと、美しい瞳が灰色の雲を映しているようだった。
まっすぐ、どこか遠くを見つめていたその瞳は、完全に心ここにあらず、だった。

アリスは何も言えず、ただ自分たちが電車を降りる駅に着くのを待つしかなかった。