何を話せばいいんだろう・・・。
そうだ、社長が思ったことを何でも素直に話すのがいいって言ってたっけ。
興味持ったことや疑問に思ったことも積極的に聞くと仲良くなれる・・・?
友達って言うのはそうやってはじめるものなのかもしれない・・・。

「あのさ」

「はい」

「何で、日本に来たの」

「え・・・」

・・・少し突発的過ぎたか・・・

「いや、社長と知り合いで就職が決まったってことは聞いたけど、何でわざわざ日本なのか、と思って。ロンドンのほうがいくらでも事務所はあるし・・・。」

「・・それは・・・」

人に言えないような理由があるんだろうか。
あんまり素直に何でも聞くもんじゃないかもしれないな。聞かれたくないこともあるかもしれないし・・・。

「あの、それは個人的に日本の音楽事務所で働いてみたいって思っていたからなんです。日本に興味があって・・・日本が好きなので」

「そうなのか。」

適当にはぐらかされたか。ま、俺もさっき同じことしたし、関係ねぇだろってことかな。
他に何を聞こう・・・

「じゃあ・・・うちの事務所の印象はどう。俺は結構若い連中も多いし、仕事はやりやすいほうだと思ってる。外国人のあんたに不具合があるなら、今のうち俺に愚痴っとけ」

冗談交じりに言うと、彼女は少し苦笑して返した。

「そんな、愚痴るような不満なんて何もないです。むしろびっくりしてるくらいで。こんなに早く仕事に慣れると思ってなかったですから。本当に皆さん親切で何でも教えてくれて・・・シュラさんにも、皆さんにも感謝しています。」

「・・・本当に何でも丁寧に日本語で説明できるんだな・・・。」

「え・・・?」

「いや、感心してるんだ。日本語って難しい言語なんだろ?なのになまりもなく日本人みたいにすぐ話せるのがすごいと思って」

アリスは安堵したように微笑む。

「いくら熱心に勉強してもさ、やっぱ難しい発音とかあるだろ。それに一人で日本に来たなんて女なのに度胸あるっていうか・・・すごいよ。」

アリスはおかしいように笑った。
シュラは笑う彼女に首をかしげた。

「そういうシュラさんだって、まったく違和感なく話せてますよ?」

「え・・・ああ・・・俺は」