「つまり、珍しく君は一人の人間と関わってみようと思ったというわけか。」

「うん」

社長は椅子をこいで自分の机に戻りながら言った。

「いいことだね。」

「・・・・。」

今わかったことを言うと、見た目の違いってすごいんだな、ということ。
自分が違う人間として扱われるわけが少しわかった気がしたんだ。
彼女を見て、俺は今まで会ってきた仕事の相手とは違う、と思ったんだ。
うまく言葉にできない気持ちは省くけど、まず、彼女の毛色に驚いた。

「毛色・・・?」

窓のブラインドを落として、彼は不思議そうに聞き返した。
シュラは静かにうなずく。

「俺が何度もカラーリングしてるのはあんたも知ってるだろう。俺が一番自分の容姿でいやなのはこの髪の色だ。」

色の違う両目につき漆黒の髪色。どう考えてもどう見てもアンバランスだった。
金髪に憧れさえ抱いていた。

「彼女は美しい金髪だ・・・しかもそれは地らしい。」

「たまにいるにはいるらしいね、向こうの人でも」

ボーダー模様に降りかかる光をそむけるように、シュラは視線をはずした。

「単純に言うと、いろんなことが聞きたかっただけかもしれない。」

社長は掴んだ棒を軽くまわして太陽の光を遮断した。

「どうして地で金髪なんだ、からいろんなことを。どうしてそんなに流暢に日本語が話せるんだ、どうして俺と話すときそんなに緊張した素振りをするのか、どうして一人で日本にまで就職しにきたのか、家族はいないのか、好きな・・・」

「好きな?」

「好きな・・・モノは、なんなのか・・・」

テーブルの上のコーヒーを取ろうとする手が止まっていた。

「彼女の、友人になりたいと思ったんだね」

「そう、なのか・・・?そう思うことは、そういうことなのか・・・」

「だと思うよ」

「・・・やっぱりわからない。」

「そうだね、やっぱり・・・論点がずれているんだと思うよ。」

シュラは短くため息を落とすと、立ち上がった。