複雑な面持ちで画像を保存をしていると、後ろから不意に声がかかった。

「ねぇ」

「あ、はい!」

慌てて振り返るとショートヘアの綺麗な女性が見つめていた。

「貴方がアリスさんよね?」

とても黒髪が綺麗で、瞳も漆黒色。同じく黒いピアスが両耳で輝いていた。

「はい、そうです・・えっと・・・」

「私、星麗奈(ほしれな)。一応ゴーストライターとしての貴方の指導係なの。よろしく」

二人目の友達は、シュラに負けるとも劣らずの美少年・・・じゃなくて美女、麗奈さんだった。

「あ、こちらこそ!よろしくお願いします。えと・・・星さん」

「フフ、麗奈でいいわ、よろしくね、アリス。」

「はい!」

そう言って優しく微笑んだ彼女は、日本人女性らしい美しさを持った人だと印象を受けた。

シュラが女性だったらこんな感じだっただろうか・・・。
お姉さんの雰囲気を漂わせる彼女に少し酔ったアリスは、彼女が案内するまま仕事場へ向かった。

事務所での仕事は、色々慣れないこともあるけどやっぱり音楽に携わる仕事はとても楽しくて、充実した日々を送っている。
周りの仲間は皆親切だし、国の違いなんて感じさせない暖かさで接してくれた。
それに、何より・・・

シュラは書類が散らかるテーブルに頬杖をついて、ボーっとアリスのことを見ていた。
するとアリスが不意に自分のほうへ視線を向けてびっくりした。
反射的に視線をそらした。
あからさまに慌てた様子を隠すように、仕事を始める準備をした。

アリスは冷たさを感じさせる彼のその行動を、驚いたが少し嬉しいと感じた。
彼が素直に恥じらいを感じて視線をそらしたなら、十代の青年の「自然」を感じたような気がしたからだ。
天才と謳われても、女性不信で複雑な性格の持ち主だとしても、純粋に17歳の青年の部分を見ることがなかったから・・・。
こんな些細なことで大げさかもしれないけど、一ヶ月側で仕事をしてもつかめない人だから、自分の中で何かもやもやしたものが広がっていた。