どんな顔をしただろう。
あからさま過ぎたよね・・・。
きっと私はまだ隣にいることすら不自然に感じているんだ。
だって出会うはずがないと思っていた人なんだし・・・。
っていうのはおかしいかもしれないけど。
でもせっかく仕事にも慣れてきたんだし、周りの人たちに不自然に思わせる行動はしないようにしなきゃ。

アリスはそんなことを考えながら、そっとシュラを横目で見てみた。
彼は相変わらず、ポーカーフェイスで真剣にノートを読んでいる様子。
アリスは彼のことを男性として意識してしまう自分に困っているのに、彼は普通に女性との関わりを考えたりしないのだろうか。

ていっても、まだ17歳だもんね。
でも私が17の頃は・・・。自分が10代の頃の話なんてできるものじゃないか。
でも、それとなく聞いてみようかな。

「あの・・・シュラさん」

「あ?」

「えっと・・・あの、わ・・・私のことはアリスって呼び捨てでいいですから!」

「え・・・ああ・・・そうだな。苗字で呼んでも変だしな。」

「はい・・・。(聞けない・・)」

女性関係のことなんて・・・聞けるはずがない。
いくらマネージャーだからといって、事務所でのタブーを私が破っていいはずがないもの。例え二人きりだからといっても。
それに、シュラのこと好きな若いスタッフさんは、私が特別だとか思って嫌な気がするだろうし。

実際シュラはどこでもモテるはずの青年だ。
そんなに外で遊んだりはしないで、仕事の毎日らしいが。

私の夢はシュラの側で仕事をして生きていくことだった。
でも、それももう今では叶ってしまった夢。
私は欲張りだから、どれだけ側にいられて嬉しくても、シュラを求めすぎる。
もっと色んなことが知りたい。
もっと近くにいたい。
もっと話してほしいし、笑ってほしい。
私だけの彼が欲しい・・・。

バカかな、私。

「おい、降りるぞ。」

「え・・あ!はい。」

たどたどしくホームに下りるアリスにまたさりげなく手を貸して、彼女は恥ずかしそうに礼を言った。