シュラはボタンを押しながら続けた。

「俺忙しくてあんまり時間空いてないけど、休みの日とかちょっと空いた時でもいいから、ちょくちょく教えてくれ。」

「はい、もちろんいつでも」

「最近は仕事柄あちこち行くことも多くて困ってるんだ・・・。いつまでも通
訳兼、マネージャーと両方も気の毒だとか社長が言うしな。」

「はい。(まさかこれも社長の計算?)」

「俺のせいであんたの仕事が増えても大変だろう。」

アリスは少し落ち着きを見せて自信ありげに言った。

「大丈夫ですよ、シュラさん半分日本人ですし。きっとすぐ慣れます!」

それはシュラの出生を意味する言葉。
事務所内、シュラの前では禁句だった。
特にそうと決められた方針でもなく規則でもないが、シュラは周りの大人たちが気を使ってそうしていることは知っていた。
何でも本人が自分の話をされると極端に嫌がるので、スタッフたちは気を遣うようになったんだとか。
だがアリスはまだここに着て間もない。

シュラは自分が言うことでもない、とそれを聞き流した。
アリスは少し申し訳なさそうに付け加えた。

「ただ、あの・・・条件といっては失礼ですが」

「・・・?」

「一つ教えてほしいことがあるんです。」

ただ何年も気になっていたことがあった。

「答えてくださいますか・・?」

「・・・ああ、何?」

事務所でもこれはトップシークレットだとされていた。
だってシュラの出生や職業を知っていても、プロフィールなんて一度も公開されたことなんてなかった。
会社にだって、事実を表ざたにしていない。それがますます気になる。

でも・・・

「シュラさんって・・・」

どうしても知りたかった。

「おいくつなんですか・・・?」

見た目ではわかりにくい。
でも、たぶん・・・23~25歳?くらいに見える。

彼は相変わらず表情を変えずに答えた。

「ああ、なんだ、そんなことか。17だけど?・・・今年で18か。」

え・・・?

私が恋する王子様は・・・

「17歳!!!!!!!!!!!?」

未成年、だった。

彼は少し驚いた様子で、ただただおろおろするアリスを呆然と見つめていた。