シュラは社長イスに座って笑う男の机を叩いた。

「社長、この事実にご理解いただけるならどうか人事異動を」

その美しい瞳は冷酷さを感じさせた。

「うむ。」

「じゃあ・・」

彼が安心したように表情を緩めると、間髪いれずに社長は続けた。

「アリス!そこにいるんだろう?」

アリスはびっくりして体がこわばった。
焦ったが少し間をおいて、ゆっくり部屋へ入った。

「失礼します・・・」

シュラは社長と向き合ったまま、こちらに背を向けていた。
社長はゆっくり立ち上がり、彼の背中まで回ると肩にポンと手を置いた。

「ね。」

社長はにこりと笑うとドアの前で凍り付いていたアリスに小声で一言言って、部屋を出て行ってしまった。

「(「大丈夫だから」って・・・何がよ!)」

ドアが無情に閉まる音と沈黙。アリスの心情と部屋の静けさは反比例していた。
アリスは心の中でそう叫び、以前背を向けたままのシュラになんと声をかけたらいいのかわからなかった。