「大体何が不満なんだね、アリスは頭のいい子だよ。それに美人だ。」

「だから、あんたが推薦する人間が嫌だってことじゃなくて、女が嫌なんだよ」

「具体的に何が嫌なんだね?」

社長はシュラの不機嫌さを無視してかまわず問いかけ続ける。
シュラは思わず眉をひそめた。

「何が嫌って・・・、言わせんのかよ。」

「言ってみたまえ。」

シュラはため息交じりに話し始めた。

「マネージャーのくせにやたらと俺のプライベートな質問ばっかしてくるんだよ、女はいんのかとか、どこに住んでるんだとか、今までどんな女と付き合ったのかとか、くだらねぇ!女である前に仕事相手として俺と関われって!挙句に飲みに行こうってしつこく誘ってくるし・・・ああ、だまされて合コンに参加させられたこともあったっけな。」

ドアの向こうでアリスは愕然としていた。
ちょっとシュラが気の毒に思えたからだ。

「なるほどねぇ・・」

社長は自分から聞いておきながらなんだか気の無い返事。
シュラは気分が悪いような顔をして、低い声で言った。

「・・・前は無理やり歓楽街に連れ込まれた・・」

シュラは社長をにらみつけた。
この事実にはアリスは思わずドアの向こうで口を開けていた。

「ハハ、つまり襲われそうになったのかい、男の君が?」

社長はいつのも調子で笑っている。
この反応にはさすがの彼にも頭に血が上りかけた。
誰も知らないだろうが、日本でもロンドンでも危険な目に遭ったことは一度ではなかったからだ。
それが男としてどれだけプライドが傷つけられたか。