白いカーテンが揺れる。

薄暗い大聖堂に優しく光を入れるように。

大きな窓はわずかに曇り、でもかすかにグラウンドではしゃぎまわる子供たちを映していた。

窓は普通の教会のような豪華なステンドガラスではなく
普通の家と同じような古びた窓だった。

下町の建物の特徴らしいが、造りはしっかりしていて中身は普通の教会と変わらない。

ただあちこちに年季が入っている様子はある。

そんな薄暗い大聖堂に一人、少年がいくつも並ぶ一番後ろの机で
黙って座ったまま一冊の本を見つめていた。

しばらくしてその分厚い本を置いて、まじまじと表紙を見ていた。

少年にはその本のタイトルが読めなかったが、それが英語ではないということはわかった。

ずいぶん古い本らしく、埃もかぶり、ところどころ破れかけていた。

ページをめくると、紙もよれよれだった。

何気なくパラパラと中身を見ていくと、ひとつのページに目が留まった。

そこには、白装束の翼が生えた女性の絵が描かれていた。

茶色くにじんだ絵は見にくかったが、その大きく力強い翼がなんとも彼の心を動かした。


「・・・天使?」


ポツリとそう呟いたとき、背後から彼に声がかかった。


「あら、女神様の本なんて読んで、お勉強?


シュラは彼女が言い終わらないうちに、眉をひそめて席を立った。

シュラ・・・。」

右のまぶたからまっすぐと数センチ傷跡を持つそのシスターは
優しく彼を見つめて言った。

額には十字架のしるしがある真っ白なフードをかぶっている。

「別に・・。」

シュラはそっけなく答えると、本を閉じて手に取る。

シスターは優しく言葉を続けた。

「お外はいい天気よ、遊んでらっしゃい。」

シュラはその分厚い本を見つめ
さらに振り払うように言葉を続けた。

「日に当たるのは嫌い。」

首を覆うように伸びた漆黒の髪をなびかせて、振り返った。

「それに、皆怖がる。黒い髪も、色が違う両目も。」

鋭い瞳で、彼女を睨んだ。

彼は長い机から離れ、マリア像の方へと歩いた。

「暇だからって俺にかまわないでください。」