アリスは混乱しながらも何か言わなければと、英語で話した。

「あ、あの!すみません、ありがとうございます。あの」

青年はおろおろするアリスに、階段の下まで落ちてしまっていたトランクを運んで渡した。

「あ、ありがとうございます。」

青年は何も言わずアリスの右足首の具合をまじまじと見た。

「あ、大丈夫ですので。あの、ここの事務所の方でしょうか。」

「黙ってな。」

「へ・・」

彼は冷たく言うと立ち上がった。

「ちょっとここで待ってろ。」

そういい残して事務所へ入っていった。

やっぱり事務所関係者かな・・・。
所属してるミュージシャンかもしれない。

彼が見えなくなって少し落ち着くと、自分が汗をかいていることに気づいた。
あまりの急なことに驚きすぎて、冷や汗が出ていた。
落ち着くと何がなんだかわからなくなり、疑問が溢れた。

彼はいったい誰?
なんで親切にしてくれるんだろう。
いくつぐらいの人だっけ・・・。
金髪だったけど本当に外国人?
サングラスの奥の表情を覚えてない・・。
でも若い青年だった。

私のこと軽がると抱えて
とても、懐かしいような、さびしいような香りがした・・・。