少しあきれたが、アリスは彼らに道案内を頼むことにした。

日本では有名で大手の音楽事務所、「SEED RECORD」
やっとその大きな建物に辿り着いた。

ここに彼がいるのだと思うと、心臓が高鳴る。
いや、今いるかどうかはわからないけど・・。

しつこく言い寄る二人を適当にあしらい、アリスは恐る恐る建物に入っていった。
慣れない町並みと環境になんだかどっと疲れた気分だ。
歩きすぎて新しく買ったヒールが辛い。

とりあえず受け付けらしきところで自分が来た用件を話し、社長に取り次いでもらいたいと話した。
受付の女性はアリスの流暢な日本語に少し驚きの表情を見せたが、丁寧に社長室までの行き方を説明してくれた。

エレベーターのボタンを押し、静寂の中で緊張していた心が落ち着いてきた。

ついに
ここまで来たんだ
ついに・・・

厳しい悲劇から約5年
何十年もの人生の中のたったの5年だと思う。
でも私にとっては何十年もの不幸を凝縮させたような5年だった。
すべてはこのときの幸せのため・・・

最上階までエレベーターが上る。
メイクを直そうと社長室に向かう前にトイレに寄ることにした。
その顔にはもう5年前の顔ではなかった。