そして
新たな未来が始まろうとしていた。

日本の真夏での空港。
ちょうど夏休み期間、海外旅行へ向かう日本人客の混雑をぬけて、アリスはやっとの思いで空港を出た。
自動ドアを通って一歩出た瞬間、気温の高さが日差しでわかった。
照りつける太陽は、容赦なくアリスの白い肌を刺す。
眩しさに思わず目を細める。

「あつ・・・・。」

金髪が日差しをさらに反射するようだ。
教会で願いを込めて作ったクロスのピアスが、彼女の左耳で光る。

そう
すべてがここから始まろうとしていた。

アリスは地図を片手に日本の都会の街を歩いていた。
日本の夏は暑いと聞いていたものの、かなりバテ気味だった。
日傘をさし、人通りの多い昼間の街を縫うように歩いていた。
時々人とぶつかりながらも迷子のように彷徨い、目指す場所にはなかなか辿り着かない。

少しため息をつき、大きな公園へ入りベンチに腰掛けた。
もう一度改めて地図を見ようとしたとき、不意に声がかかった。

「ねぇねぇ君、一人?」

20前後の青年二人が、自分を覗き込んでいた。
思わず拍子抜けして唖然としていた。

「あ、日本語わかんない?」

二人は何かを話しながら片言の英語で何かを伝えようとしていた。

ナンパか・・・。