「10万枚!!!?」

ありえない枚数の売り上げ。インディーズで・・?
忙しかったシュラは日本で発売したとき、いったい何枚生産されたのかもしらないし、売れるものを意識して作ったわけでもなかった。
一度特別ライブをインディーズバンドたちに混じって披露したことはあったが。
シュラにとっては営業みたいなもので、たいした意味を持つ仕事だとは思っていなかった。
ロンドンのそう有名でもないこの事務所が、特に注目されているわけでもないだろうと、思っていた。
ただシンが向こうと深い交流があったからという、ついでの形だった。

シュラにはいくら考えてもそれほどの売り上げを記録した理由がわからない。

社長は優しく微笑むと、昼に昇る太陽を背に、付け加えた。

「行ってくれるよね?・・・日本へ。」

シュラはやっと納得の表情を浮かべた。
いつものように、冷静で鋭い瞳。ポーカーフェイスの彼へ。

それから日本へ渡るとことになったんだ。
もうすぐ17の年を迎える頃だった。
色んな意味で自分にはちょうどいい機会だったのかもしれない。

未来は大きく切り開かれ始めた。