「悟くんはないの?そんな風に人を好きになったこと・・・」


「え・・・」


俺もほとんど同じように君が好きなんだけど・・・。


言えるわけがないから、私は適当に話をはぐらかした。


「あったかもね。でも俺はモテないから・・・」


「そんなことないよ!私の友達でも悟くんのこと好きな人いっぱいいるんだよ?悟くん気づいてないだけなんだよ。」


そう言ってからかうように彼女は笑った。


そうだとしても、俺は君だけに好かれていれば本当に幸せだった。

・・・だけどそんなことは絶対にないことを今知ったよ。


「どうだろうねぇ・・・。」


彼女はまた可愛く笑って、そっと私の腕に手をかけた。


「でもこうして一緒に帰ってると周りからは恋人同士に見えちゃうかもね。」


「・・・そうだね。」


だけど心臓が痛いから・・・離して欲しいなぁ・・・。

夕日の色で赤面はごまかせているかな。


仲良く歩を進めながら、同じように歩む同じ長さの黒い影。

オレンジ色を帯びた彼女の金髪はとても美しい。


「私なんだか男の人なのに悟くんには何でも話せちゃうなぁ。何でだろう。」


「さぁね・・・。」


私の同様した様子に気がついたのか彼女は自然に手を離した。

そして少し早歩きして私の前に回りこむと、右手を上げた。


「私もう家すぐそこだから。ここで。ごめんね、つき合わせちゃって」


「あ、ううん、じゃあ明日待ち合わせ場所で。」


彼女はうん、と言って手を振って歩いていった。


私はただ、その後姿をしばらく見つめていた。


なんだろうね・・・この敗北感は。

彼女の後姿も切ないが、俺の心の中もロンドンの冷たい風が吹いているようだ。

日本が恋しくなったな。


そんな風に思いながら、私も静かに家に帰っていった。